うそつき執事の優しいキス
 さっきまで、ふわふわ浮いていた心が、すぃ、と低空飛行を始めた感じする。


「なんで、蔵人さん……?」


 小声で言った、半分ひとり言みたいな答えに、宗樹も小声で返した。


「……今の歌、ラブソング……だろう?」


「う、うん。多分」


「歌詞はねぇけど『好き』が詰まった、すっげ良い歌に聞こえた。
 歌とピアノの二人で息がぴったり合って、気持ちよさそうだったし。
 蔵人の『想い』は、絶対お嬢さんに向いてたぜ?
 ……それで、今までまっすぐ俺を見つめてくれたのに。
 歌が終わったとたん、俺から視線を外す、お嬢さんの気持ちは、どこに向いてるのかな、と」


「宗樹だよ」


 特に迷うこともなく、思ったことを即言ったら、宗樹の目が丸くなった。


「うぁ、よくも迷いもよどみもなく」


「だって、宗樹のコト大好き、だもん」


 あ。宗樹の顔真っ赤になった。


「じゃあ、なんで今、気まずそうに視線をずらしたんだよ!」


「だって、蔵人さんと音楽やってたら『好き』があふれだしてさ。
 宗樹のカッコイイ所ばっかり思いだして、なんか照れるんだもん」


「~~~」


 とうとう、ゆでダコみたいになった宗樹はその場で座り込み、頭をがしがしと掻いた。


「何やってるんだ、この俺は!
 些細なことで浮いたり沈んだり!
 莫迦みてぇだ……!」
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