うそつき執事の優しいキス
 二週間後の歓迎会。


 最初はもちろん、Cards soldierは蔵人さんを入れて歌うなんて、考えてなかったから、練習済みの今までの歌だけ歌う予定だったらしい。


 特に緊張することも無い、軽いイベントのはずだったのに。


 入学式後の部活紹介みたいに会を盛り上げ、最適な場面で舞台(ステージ)を他の方々に譲って去るつもりだったのが、もう一曲追加され……なんて。


 ステージの企画をやりなおしている宗樹の横顔を、やっぱりカッコ良いなぁ、と眺めれば。


 突然。


 きゅーーっって、心が締め付けられように痛んでビックリした。


 なんで!?


 なんで、心が痛むの?


 今まではともかく、これからは執事の真似事を『イヤイヤ』西園寺のためにやって貰うんでなく。


 好きでわたしの世話を焼いてくれるっていうんだもん。


 にっこり笑顔でよろしくお願いします! っていうならともかく。


 申し訳ないなんて謝ったり、ましてや宗樹の境遇に心を痛めることなんて、無いはずなのに!


 どうやら、その変なドキドキ感は、宗樹を見ていると起こるみたいで。


 宗樹に見つめられると、もっとひどくなるようで!


「ああ、来たな、お嬢さ……西園寺。
 早速作曲頼む」


 なんて。


 当たり前の言葉で、フツーに声をかけられただけなのに、心臓が飛びはねる。
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