うそつき執事の優しいキス
 でも、もっとひどくなったのは、井上さんが、宗樹の近くに寄って、彼らの話し合いに参加した時だった。


 井上さん、マネージャーなんだから、二人の話しに加わるのは当たり前だよね?


 確かにCards soldierの中でクローバー・ジャックはダイヤモンドキングより好き! とは言ってたけど、井上さんは積極的に自分アピールとかして無いし。


 宗樹だって、神無崎さんと話しているのと同じ感じだもん。


 なのに、なんでこんな気持ちになるんだろう?


「理沙。理~沙。作曲、しよ?」


 しかも!


 宗樹の横顔から目が離せなくて、ついつい見つめてしまうことに、蔵人さんが声をかけてくれたおかげで、やっと気づくなんて。


 その蔵人さん自身。


 宗樹たちと一緒にこの部屋にいたのに、声を賭けてくれるまで、目にも入らなかったなんて。


「~~ダメかもしれない……」


「僕の歌を書き写すのってやっぱり難しい、かな?」


 わたしのつぶやく声に、こたえてくれたのも、蔵人さんだった。


 一度はステキな歌だって言ってはくれたけど、良く聞いたら実はつまらない歌だったらどうしよう、なんて。


 困った顔の天使が、更に困った顔をしてる。


 うぁ、誤解!


 思わずつぶやいた声を、蔵人さんに聞かれて心配されちゃった!


 わたしは、どーーんと浮かんでた宗樹への想いを首を振ってうち消すと、蔵人さんに笑った。
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