うそつき執事の優しいキス
 神無崎さんは、カッと顔色を変えると、宗樹が止める間もなく蔵人さんを殴りつける。


 ボスッ!


 今まで、避けられっぱなしだったその拳は、蔵人さんのみぞおちにキレイに、はまり……さすがの蔵人さんも、殴られたお腹を押さえて片膝をついた。


「蔵人先輩!」


「ライアンハート先輩!」


 蔵人さんに駆けよるわたしと井上さんにふ……と小さく息をつき、神無崎さんはそのまま、ふぃ、と準備室を出て行こうとした。


「裕也!」


「宗樹は来んな!」


 神無崎さんを追いかけようとした宗樹の声を振り切り、どこかへ消えてゆく寸前。


 わたし、神無崎さんと目があった。


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