うそつき執事の優しいキス
「やっぱり、西園寺の相手は宗樹、だよな~~
 どー考えても、横から割り込んで来たのはオレの方か……」


 宗樹の『世界が終わった』ため息に負けないほど大きなため息を深々とついて、神無崎さんが言うのを聞いて、わたしの首は自然と傾く。


「なんで、本命さんがいるのに、わたしと付き合う気になったの?」


 今まで相当女グセが悪かった……って宗樹から聞いてたし。


 本当に好きな人が手に入らないのなら、その代わりのヒトを必死で探していたに違いない。


 わたしも『恋人』じゃないけれど。


『オトモダチ』を探して、いろんな部活に関わりを持った結果が、あの部活勧誘騒ぎなんだもん。


 神無崎さんの気持ちは、判る……と思う。


 けれども。


「わたしと付き合うために、今までの女友だちを全部整理したって、聞いたよ。
 それは、かなり本気だって事だよね?
 好きじゃないはずのわたしのために、なんでそこまでやる気になったの?
 ……そして、神無崎さんの本当に好きなヒトって、誰?」


「西園寺のコトは嫌いじゃねぇ。
 オレの素顔をきちんと見て、話をしてくれるし、ここまで追いかけて来てくれたくせに『彼氏にはしない』と言いやがる。
 この神無崎裕也サマをこんな風に扱うなんて!
 面白いよなぁ。
 お前のコトが好きだったら、本当に良かったのに」
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