うそつき執事の優しいキス
 神無崎さんは、笑った。


 その笑い方が、あんまり神無崎さんらしくない、自分を嘲笑うような皮肉げで……悲しげで。


 見ているこっちが切なくなるほど、本気の『恋』だって判る。


 そんな神無崎さんが言った。 


「でも本命は……教えねぇ」


 まあ、そうね。


「神無崎さんが本気で好きになったのなら、きっと素敵なヒトに違いないね」


 神無崎さんは乱暴だし、怖いし、いつだって自信過剰気味だけど。


 確かに『キング』にふさわしい行動力がある。


 自信に見合うだけの実力も持っている。


「でも、さすがにねぇ。
 コレは、神無崎さんの本当の本気の『恋』みたいだし。
 出会ったばかりのわたしに、しゃべれるワケが……」


 ……ない。


 そう言いかけたわたしに、神無崎さんはため息をついた。


「……とは、いえ。
 蔵人にはとっくにバレてることだし。
 西園寺には散々関わらしちまったことだしなーー
 オレサマの話を聞いても、引かねぇなら。
 そして、本人には絶~~対ぇ、内緒にしてくれるなら教えてやる」


 ……っていうか、その条件でむしろ、聞け!


 なんて、勝手なことを言いだした神無崎さんに、わたし、かくかくとうなづいた。


 そんなわたしの様子に、神無崎さんは『ふん』と息を吐いて、更に深呼吸をし………言った。
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