うそつき執事の優しいキス


「………………宗樹だ」


「え?」


「藤原宗樹だ!
 オレサマの本命はっ!
 Cards soldierのクローバー・ジャックで、将来お前の……西園寺の執事になる予定のヤツだ!
 くそったれ!」


 まるで、嵐のような告白に、わたしは目を見開いた。


「えっと……宗樹って、男だよ?」


「知ってる」


「誰が一番の親友か、っていう話じゃなく『恋人』の話をしているんだよね? わたしたち」


「話は脱線して無いと思うぜ、多分な。
 ……オレは宗樹を愛してる」


 怒鳴ってから一転。


 神無崎さんの普段の言動からすれば、淡々と言葉を紡ぐ声を聞いてようやく、彼の言ってることを理解し(わかっ)た。


「えっ……えええええっ!」


 思わず叫んで、二、三歩下がるわたしに、神無崎さんは「……やっぱり、引くよな」って肩を落としたけど!


 はっきり言って、それどころではなく!


「なっ、なんで!
 どーして!
 そして、いつから男のヒトが好みに……!」


 半分パニクッて叫ぶわたしに、神無崎さんも叫び返す。


「なんで!? どーして!?
 そんなモノが判りゃオレ自身苦労なんてしないぜ! 全く!!!
 それにオレサマは『男』が好みの趣味のヒトじゃねぇ!
 恋愛対象はいつだって女だ! お・ん・な!!!」


 そこまで怒鳴って、神無崎さんは肩を落とした。


「ただ宗樹だけが、トクベツ、だったんだ」
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