うそつき執事の優しいキス
 あ~~あ、やってられねぇぜって、神無崎さんは両手を空に向かって高々と上げて、伸びをした。


「しっかも、宗樹の本命がよりにもよってお前じゃん?
 世界で一番嫁に出来ねぇヤツに、なんで惚れるかな、あの莫迦は」


 朝は、久しぶりに宗樹の本気拳を食らっちまったい! なんて。


 神無崎さんはにやりと笑うと、ホラここって宗樹に殴られたそうな跡を見せてくれた。


「Cards soldierの増員問題の件の時だって、こんな風に殴って来なかったのにな~~
 宗樹はマジだぜ? お前のコト。
 アイツの好きな女がフツーの女ならさ、ま、せいぜい頑張れよ~~って素直に送り出してやれたんだけどさ。
 シキタリだの家の事情だのを、ぶち破って幸せになるヤツがいるって言われればなぁ。
 今の世の中、男同士でも幸せになるヤツらだって、たまにはいるじゃん。
 その中に、俺達が入れねぇって、誰が決めた? って感じ?」


「えっ……ええと。
 コレはもしかして、宗樹をめぐってのライバル宣言って言う……モノかな?」


 もしかしたら……もしかしたら。


 クローバー・ジャックが好きな井上さんと、対決することもあるかもしれない、とはちらっと思っていたけれど。


 まさか、神無崎さんと宗樹の取り合いになるとは、考えても無く。


 おずおずと聞いたら、神無崎さんは、肩をすくめた。
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