うそつき執事の優しいキス
 そ……そか。


 蔵人さんのコトはともかくとして。なんとなく、神無崎さんと仲良くなったのは。


 同じく、宗樹が好きなヒト同士。


 なんか変な連帯感が生まれて、神無崎さんが怖くなくなったから……なんだけど……それは言えないことだ。


「裕也も、蔵人も、とびきりイケメンだし。
 まあ……どっちも、多少乱暴だけどさ。中身も悪いやつらじゃねぇ。
 そんなヤツらに囲まれて、お嬢さんの心が俺から離れたら、どうしよう、なんて……莫迦なことを考える」


 そう言って宗樹は、まっすぐわたしの顔を見た。


「お嬢さんを手に入れたい……なんて。
 元を正せばこんな、たったひとつの想いだけなんだけれど。
 俺がやろうとしていることは、何百年も続く長い歴史や、伝統っていうヤツを根底からきれいさっぱりひっくり返すことだ。
 これは、成功してもしなくてもタダでは済まないだろうし、何よりお嬢さんに一番迷惑がかかる。
 そんな、大きなことを俺だけの『好き』って心一つだけで始めて良いのか?
 俺はお嬢さんのことを、心から愛してる。
 けれども、この気持ちは俺だけの空回りなんじゃないか?
『好き』って言う俺の一方的な気持ちと一緒に、迷惑を押しつけることになるんじゃねぇかと思った」
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