うそつき執事の優しいキス
 蔵人さんより、神無崎さんより、宗樹が一番大好きなのに!


 眺めてると胸が。


 この胸がきゅーーって締め付けられるほど痛むのは、宗樹だけなのに!


 ああ、もう!


 なんだか、悲しくなってきた。


 お互いちゃんと好きなのに。


 このままじゃきっと、何も変わらない……から。


 わたしは、あふれそうな涙をごしっと拭いて、宗樹に言った。


「宗樹……宗樹。
 わたしが好きなら、印(しるし)をちょうだい?
 ……そしたら、わたしも証(あかし)をあげる」


「……印?」


「うん。
 わたしのコトを、名前で呼んで?
『お嬢さん』でも『西園寺』でもなく……
 ……宗樹は忘れてるかもしれないけれど、わたし『理紗』って名前があるのよ?」


 宗樹の目が見開かれ……そして優しく細まった。


「……理紗……」


 うん、ってうなづくわたしに、宗樹がささやく。


「理紗のこと……好きだ。
 愛してるぜ、心から」


「うん。わたしも宗樹のコトが好き。
 心から、愛してる」


 わたしも、そうささやき返して、宗樹の顔に顔を寄せると目をつぶってそっと唇で唇に触れ……すぐに起き上がり。


 ついでに宗樹の上からも逃げ出した。


 はっ……はずかしい~~
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