うそつき執事の優しいキス
「……うん」


 ようやく声に出した想いに、宗樹が優しく笑った。


「理紗の唇は、甘くて素敵だ。
 唇で唇に触っていると、どんな心配ごとも、不安も無くなって行くような気がする……」


 そう言って、宗樹は一瞬、わたしの肩に自分の顔をうずめるように抱きしめると、すぐに離して晴れやかな顔を見せてくれた。


「俺は、まだ何の力も無いガキだけど、絶対理紗に見合う男になる。
 だから、ちゃんと待ってろよ」


 真面目くさった顔をして、言う宗樹に、わたしは嫌よって笑った。


「一人で大人しく待ってるなんて、イヤ」


「理紗?」


「だって、わたしだって宗樹と一緒にがんばるんだもんっ!」


 そう言って、わたし。改めて宗樹にびょん、と飛びついた。


 一人では無理なことでも、きっと『二人』なら。


 難しいことも、大変なことでも、きっと乗り越えて行けるから。


 わたし、一人で待ってない。


 宗樹と一緒に歩いてゆく。


 せっかく同じ、高校に入っていることだし。


 今は、今しか出来ないことをやって、行けるところまで、ついてゆく……!


 そんな風に拳骨を握るわたしに、宗樹は目を細めてふ……と笑った。


「じゃあ、当面の問題はまず、新生Cards soldierの新曲を無事、発表することから、だよな」


 どんなささやかなコトも、何事も。中途半端で放りだしては、先に進めない。
< 238 / 272 >

この作品をシェア

pagetop