うそつき執事の優しいキス
 宗樹と一緒にカタる今、頑張っていることと、未来(さき)の話が楽しくて。


 ピアノの椅子を転がしたまま、絨毯に座り込んで、どれだけ話をしていたんだろう?


 宗樹が、じゃあ、そろそろ帰るって、わたしの部屋を出て行ったのは、夜もだいぶ更(ふ)けた後だった。


 ……今日も、一杯いろんなことがあったなぁ。


 疲れていたけど、心地よく。


 わたしの唇にはまだ、宗樹の情熱的な唇の感覚が残ってる。


 そのことが、嬉しくて、恥ずかしく。


 宗樹の背中を見送った後、電気も消さずにベッドに飛び込んだら、ほどなくして部屋の照明が消えた。


「……爺?」


 ウチには、自動消灯器なんてモノは無く。


 絶妙なタイミングでメインの照明消え、薄暗がりになったならたなら、それは執事のしわざだ。


 わたしが静かに呼びかけると、今度こそウチの執事長、藤原宗一郎がベッドサイドまでやって来た。


 そして、深々と一礼する。


「はい、お嬢さま。なんでございますか?」


「いつから、そこにいたの?」


「少々前からでございます」


 わたしが、宗樹とキスをしている所、見た?


 ……とは、とても聞けずに、別のコトを聞いてみた。
< 239 / 272 >

この作品をシェア

pagetop