うそつき執事の優しいキス
「……あの……もしかして、ウチのマスターキーとか、探してない?」


 カギは宗樹が勝手に持ち出しちゃったんだ。


 探してたら大変だろうと聞いてみたら、爺は薄闇の中で深々と頭を下げた。


「最初からカギの行方は存じておりますよ。
 どうやら、宗樹めに、かなり切羽詰まった話があったようだったので、一時的に貸与(たいよ)させていただきました。
 あれも、一応は藤原家の末裔。
 お嬢様にフトドキなことは決してせぬ、と信頼しておりましたが……
 甘かったやもしれません。
 夜遅く、お嬢さまの部屋に訪問させたこと、深くお詫び申し上げます。
 今夜のことは、きつく叱っておきますゆえ、平にお許しくださいませ」


「なんだ、爺、宗樹がカギを持ってったこと知ってたんだ」


 そして、多分キスも見~~


 きゃ~~ いや~~


 なんて、思わず、布団にもぐりこみかけたけれど!


 爺の物騒な物言いが引っ掛かった。


 宗樹を叱っておくって、それはダメ!


「宗樹のコトは叱らないで!
 わたしが先に……その……キス、しちゃったんだし!」


「しかし、西園寺家の執事たるもの、そのようなことで心を乱してどうします。
 いつでも、どんな時でも至極冷静に対処しなくてはなりません」
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