うそつき執事の優しいキス
 ---華道部---


「さっ……西園寺さん! お花っ! 切れてます! 真っ二つに切れてますっ!
 このままだと、ものすご~~く、斬新な感じに仕上がっちゃいますけど、いいんですか!?」


「……あ」


 華道部部長の焦った声で、手元を見ると、茎の長さをそろえるために横に切るはずのお花を、縦割りにちょん切ってた。


 本来なら、一本立ちの姿が美しいはずの花が、へにゃっと崩れるように倒れている。


 他にも……剣山に刺した花が、葉が適当にぐさぐさと突き刺さり、どー見てもコレは『お花』じゃない。


 斬新過ぎる作品は、とてもヒト様に見せられるものではなく。


 わたしは、とうとうため息をついた。


「すっ、すみません~~やり直します~~」



 ---社交ダンス部---



「あの……西園寺さん。……足。
 今、僕の足をぐりぐり踏みつけてますが~~」


「へっ?」


 お手本のダンスの実演中。


 申し訳なさそうな声に足元を見ると、確かに。


 わたし、ダンスパートナーである男子部員の足をダンス用のハイヒールで力一杯踏みつけていた。


 この部で一番上手な『ダンス部の王子様』だそーな。


 でも、宗樹や、蔵人さんや、神無崎さんに比べてだいぶ落ちるイケメン君が、目に涙を一杯ためて、わたしを見てた。


「うぁっ! すっすみませんっ! 足、大丈夫ですか!?」


 ---テニス部---



「きゃーーっ! 西園寺さんが打った球が、部長の顔面を直撃したっ!」


「うっわ~~! すみませんごめんなさいすみませんごめんなさい!」


 ……………
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