うそつき執事の優しいキス
 最初の時宗樹は、わたしの肩を軽く抱くだけで、人ごみの中をすいすい移動してたけど。


 大好き同士って判った今は、もう少しだけ近くに寄り添って歩く。


 わたしの大嫌いな人ごみも、宗樹の腕の中ってだけで、すごく安心だ。


 きゃ~~ なんか恥ずかしい~~ 嬉しいけれど!


 そう思いながら今日も混んでる電車の中、連結器の近くで宗樹に守られ、幸せのため息をついた時だった。


 宗樹が、そっとわたしの耳元でささやいた。


「理紗、好き、だぜ?」


「わたしも~~」


 大好きって、言葉を続けるわたしに、宗樹がそっと息をついた。


「……良かった。理紗も同じ気持ちで」


 わたしが、うんってうなづくと、宗樹は少しだけ堅い声をだした。


「それなら、ちょっと聞いていいか?」


 どうしたの? って見るあげると、宗樹は真面目な顔をしてる。


「……なんで、毎日一人でガッコ行こうとするんだよ?
 今日だって、駅で俺を待ってた~~って感じじゃなかったよな?
 もし、理紗が人ごみが苦手じゃ無かったら、一人でとっくに電車に乗ってたろ?
 なぜだ?」


 実は俺のコトがキライになった……ってわけではないんだろ?


 なんて、まっすぐに見つめられて……一瞬言葉に詰まる。


 う……うんと……


 ごまかせない雰囲気に、わたしは、目を伏せた。
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