うそつき執事の優しいキス
「本当は宗樹に執事の真似事……してもらいたくなかったから……かな?」


 うん。


『宗樹は執事じゃない』って神無崎さんにも、爺にも散々言ってたのに、結局。


 わたし、宗樹に自分のスケジュールを全~部、任せちゃったんだよね。


 しかも、宗樹は部活に行く時間になると、こっそりメールでドコに行ったらいいのかまで、伝えてくれるし。


 各部との事前の打ち合わせもしっかり済んでて、わたし本当に部活に行くだけで、なにもしなくて良い。


 宗樹は、すっかり完璧な執事さんをやっているって言うのに、わたしはここの所の絶不調で、何にも宗樹に返せて無いんだ。


「それにCards soldierのバンド活動や、生徒会執行部のお仕事で忙しい所。
 ウチの運転手さんがわりみたいに、わたしの通学の面倒をこれ以上、見てもらったら……なんか悪い気がして」


 公立高へ入ったのは、自分のコトは、なるべく自分でやりたいっていう思いもあったんだ。


 だって、それは、皆がフツーにやっていることだし……


 そう言って、宗樹を見上げれば、彼は、ふっ……と笑って、わたしをぎゅっと抱きしめた。
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