うそつき執事の優しいキス
「俺は西園寺の執事じゃねぇよ。
 理紗が好きだから、自分の出来ることを手伝っているだけだって、前にも言ったろ?
 理紗は、こんなにヒトの多い所、苦手なんだから無理をせず、もっと俺を頼ってくれ。
 全然負担じゃないから。
 それどころか、俺はこの通学時間、理紗と一番長く……近く。
 二人きりでいられる時間が、とても好きなんだ」


「宗樹」


「それに、もし。
 俺が、スケジュール管理を辞めて、理紗がどこの部活にも所属しなかったら、また騒ぎになるかもしれねぇぜ?」


「……そうだね」


 沢山のヒトに囲まれて、身動きが取れないのは、本当に勘弁して欲しい。


 前の騒ぎを思い出し、震えた所で、電車は私鉄への乗り換え駅につき……ここは空いているのに、宗樹はわたしを抱きしめたままでいてくれた。


 そして、思いきったように、ささやく。


「……どうする?
 ダイヤモンド・キングの神無崎裕也の誘いに乗って、理紗もCards soldierのメンバーに入らないか?
 そうすれば、部活動の中では、理紗を諦める所も出てくるだろうし、俺も、もっと理紗に近づける」


 井上さんと、蔵人さんと、神無崎さんには、話したけれど、他の学校のヒトには、わたしと宗樹のことは内緒だ。
< 249 / 272 >

この作品をシェア

pagetop