うそつき執事の優しいキス
「るさいな! 僕は真面目にやってる、ぞ!」


「それにしても、酷過ぎ~~
 こんな歌聞いたら、西園寺さん泣くんじゃない……!?」


 一緒になって騒いでいた井上さんが、わたしと宗樹に気がついて手を振った。


「あ、ほら噂をすれば、来たよ~~!
 ねぇねぇ、聞いて! ライアンハート先輩ってね~~
 西園寺さんが居ないと、上手く歌えないんだってさぁ~~
 なんか、言ってあげて~~」


 井上さんの声に、わたしの手を放した宗樹が拳を握って走りだす。


「理紗は、俺んだからな!
 蔵人にはやらないぞ!!」


「おいおい、宗樹が蔵人に喧嘩売ってどーする!
 蔵人の相手は、いつだってオレサマなのにさぁ……!」


 皆が遠くで、あはははって笑ってる。


 Cards soldierのメンバーたちは、大変な時でも、なんか楽しそうだ。


 いいなぁ。


 わたしも、中に入りたかったなぁ。


 こんなことになって、初めてわたし、判った。


 わたしが、最初は確かにちゃんと出来ていた色んな部の活動が、どれも全く出来なくなっちゃった、一番の原因。


 Cards soldierのことが、大好きで、気がかりで、他の部での活動なんて、したくなかったんだ。
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