うそつき執事の優しいキス
 結局。


 朝練に参加した弓道部でも、大失敗をやらかした。




 うっわ~~んっ!!


 もぅ~~やだ~~!




 度重なる失敗に『なんだ、西園寺さんって実はたいしたことないじゃない?』って陰口をたたかれ、わたし、とうとう裸足で弓道場を飛び出した。 


 別にわたし、自分がすごいヤツだなんて、ちっとも思ってないよ。


 たまたま自分が出来ることをやってみたら、騒がれて、お願いされて、ココに居た。


 やりたいことが別にある状態で、的を狙ったって、矢は当たるはずもなく。


 当然言われた文句に勝手に傷つき、朝練を放り出して逃げ出して来ちゃったら……


 どー考えても、悪いのはわたしの方だ。


 このままじゃダメだ。


 絶対ダメだ。


 そう、判ってはいたけれど、具体的にどーすれば良いのか、全く判らず。


 めちゃくちゃに走っていたら、力一杯、誰かとぶつかった。


「うぁ~~!」


「きゃ~~!」


 わたしとぶつかったヒトは、知らない男子生徒で。


 場所は、旧校舎……ココをまっすぐ行くと、第三音楽室と、準備室がある廊下の先だった。


 どうやら、適当に走ったつもりだったけれど、反射的に一番好きな場所へ向かってたみたいだ。
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