うそつき執事の優しいキス

 わたし、Cards soldierでも、軽音部員でもないのに。


 また、宗樹に頼ろうとした~~


 え~~んっっ!


 起き上がる気力もなく思わずその場で泣いていると、わたしとぶつかった男子生徒が、慌てて手を差し伸べて来た。


「大丈夫ですか!? どこかにケガでもしましたか?」


 切羽詰まったその声に見上げれば。


 ちょっと目元が涼しい感じはするけど、他に何の特徴の無いことが特徴みたいな、ごくフツーの男子生徒が、心配そうに、こっちを見てる。


 廊下のあちこちに、彼のらしい書類がばらまかれている所をみると、どーやら、彼はそれを読みながら歩いていて前方不注意、みたい。


 わたしも前なんて見て無かったから、彼が悪いわけでは全然なく。


 泣いていたのは別に、ぶつかった所が痛かったからって言うわけじゃない。


 でも彼は思い切り誤解して、心配してくれたんだ。


「ごっ……ごめんなさいっ!
 わたし、別に大したことないのに、おおげさに泣きだしちゃったりして!
 なんだか、いろんなことが一杯一杯で……」


 もう、いや~~恥ずかしい~~


 わたしの方も慌てて、手でぐしっと涙を拭くと、すぐに起き上がって、彼のばらまいた書類を拾おうとし……手が止まる。
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