うそつき執事の優しいキス
「ぼくは、見かけも地味だし、演奏も上手くない上。
 毎日、何かと忙しくてね。
 みんなでやろうって決めていた曲作りにも、編曲調整にも参加出来ずにいるんです。
 だから、せめて、時間の空いた時ぐらいは、きっちり練習しないと。
 皆が、ぼくを待っていてくれるので」


 本当は、ぼくを置いてずっと先まで行けるのに、トモダチだから、ほっとけないって絶対待っててくれるんです。


 そう言って、彼はこめかみ辺りをぽりぽり掻いた。


「そうですか。良いヒトばかりを見つけることが出来たんですね」


 きっとこのヒトは沢山のオトモダチを見つけたんだろう。


 うらやましいなぁ、と言ったら、彼は、いいえ、と首を振った。


「トモダチは見つけるモノじゃなく『一緒に作ってゆくもの』だと思うんです。
 同じ趣味を持っているのは、きっかけでしかなく。
 後は……それから先は、どう同じ目標に向かってゆくかとか。
 相手に対して、どれだけ親身になって話し合いができるかで、結びつきが強くなると思うんです。
 もちろん、頼りっぱなしも、頼られっぱなしもいけません。
 それでもみんなのために、自分の力が及ぶ限り、頑張って。
 疲れてしまったら、誰かに頼る。
 そんなコトが、気兼ねなく出来るのがオトモダチなんじゃないですか?」
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