うそつき執事の優しいキス

 信じて。


 理紗は一人じゃない。


 俺はお前の近くに必ず、いるから。


 どんな時も、いつだって。


 これから先も、一緒に歩いてく。


 くじけそうな時も、一歩ずつ。


 二人、支え合ってゆくんだから。


 ほほ笑む宗樹に、わたしも笑ってうなづいた。


 そうだね、だって、宗樹がいるから。


 Cards soldierの皆がいるから!


 差しのべられた宗樹の手に捕まって、わたしはようやく楽屋を出た。


 まだ、幕が閉まってて、内側から観客の姿は見えなかったけれどささやかれる声や、息遣いで、分厚い布の向こうには、大勢のヒトビトがいるのが判る。


 怖い、なんて。


 すぐ、くじけそうになる心を拳骨で固め、舞台の袖で井上さんと握手して別れて、演奏位置へ着いてみると。


 目の前には、やっぱり緊張気味の蔵人さん……ううん。ハート・クィーンがいて、手を振ってくれた。


 横では、ラッキー・セブンの七瀬さんが、べースを少し上げて、挨拶をし。


 わたしの後ろでは、クローバー・ジャックの宗樹がそっとほほ笑んでる。


 最後に、ダイヤモンド・キングの神無崎さんが、中央に歩いて行きながら、わたしを眺めるから。


 大丈夫、わたしは出来るよって手をあげたら、にやり、と笑ってステージ開幕を告げる、合図を送った。


 さあ、これから始まるんだ……!
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