うそつき執事の優しいキス
「君去津高のヤツらだけで結成されたCards soldier(カーズソルジャー)ってインディーズバンドの、曲。
 その中にいた『スペード・エース』って言う、ヤツ。
 曲、僕のために書いてくれた、のに。
 歌えないのはとても、残念」

「ふうん、そうですか。
 お友達が作曲してくれた曲なら、大事にしたいですよね。
 でも、もし、ご自分で歌えないなら、その作った本人に、時々歌って貰えばいいじゃないですか」



 わたし、何の事情も知らずに、そうさらっと言っちゃったけど……



 それからずーーっと後悔することになった。



 だって、金髪の彼が笑ったのを見ちゃったから。



 さっき見せた、はにかんだ天使の笑顔じゃない。



「スペード・エースはもう、いないんだ」って。



 今にも泣き出しそうな顔の、微笑。



 ……そんな表情をするヒトに。



 わたしは産まれて初めて出会ったんだ。






  
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