うそつき執事の優しいキス
 近くの窓から身を乗り出して良く見ると、体育館の周辺に人だかりが出来ていた。


 どうやら、入学式が終わった後、部活動の新入部員募集のアピールをするようで。


 各部の代表の先輩たちが、各部のユニホームを着たり、道具を用意している最中のようだ。


 その中の一部で、生徒たちのがとんでもなく盛りあがっていたんだ。


 しかも、みんな悲鳴やら怒号の合間に何か、口々に叫んでる。


「えっ……ええと。ダイヤモンド・キング? クローバー・ジャック?
 うーんと……Cards soldier(カーズソルジャー)って……?
 なんか、どっかで聞いた覚えが……」


 叫び声を聞いたまま、口に出してつぶやいていたら、わたし、肩をがしっと、つかまれてた。

「Cards soldierだって!
 どこどこどこ! どこにいるの!?」


 何だか、すっごいハイテンションと、パワー!


 その迫力に、恐る恐る振り返ると、小柄で短めのみつあみを横にぴん、と立てた女の子がいた。


 彼女は、わたしを窓から引きはがし、自分が外を見ようと首を伸ばす。


「ごめん。
 わたしCards soldierっての初めてで!
 誰がどれやら……さっぱり」

< 58 / 272 >

この作品をシェア

pagetop