うそつき執事の優しいキス
「あっ……! ほら、すごい!
 Cards soldier(カーズソルジャー)がすぐ近くを通るよ!」


 みてみてみて見ぃ~て~~ぇ!


 なんて、叫ぶ彼女に押し切られ。


 ほろっと涙が出そうな思いを心に押し込めて、目を開けた……そのとたん。


 ウチらのすぐ側を通るヒトビトを見て、わたしの時間は止まった。


「……!」


 っていうか、視覚以外の全機能が停止した。


 息さえするのを忘れたわたしに気がつかず、クラスメートの彼女は、テンション高く騒いでた。


「ほら、メンバーのダイヤモンド・キングは生徒会会長で、クローバー・ジャックは副会長じゃん?
 これから、入学式があるんで、まだステージ衣装着てないけど、メークの下地は済んでるんだね!
 きゃーーっ!
 カッコイイ!
 素敵!
 まだメーク半分だけなのに、絵本に出てくる、本物の王さまと王子さまみたい!!
 ねぇねぇ、手を振って気づいてくれたら、振り返してくれるかな……」


 そこまで言った彼女の言葉を、わたしが手を振ってさえぎっちゃった。




 だって! 窓の外にいたCards soldierって!
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