うそつき執事の優しいキス
『クローバー・ジャックの幼なじみ』のオトモダチです~~とか言って……わたしを利用して近づくつもりだってこと!?



 井上さんって悪い人……には、見えないんだけど。


 もし、ジャックに近づくためだけに、わたしに近づいたのなら、イヤだなぁ……


『あんたなんてただ利用しただけ』って言われるのが怖くて、何も聞けず。


 固まるわたしの手を、井上さんが取った。


「だから、西園寺さんも一緒に軽音部行かない?
 ダイヤモンド・キングからも『来い』っていわれてじゃない」


 ……うぁ、それ、言っちゃう?


 オトモダチ同士、部活を見て回るのは楽しいけれど、これは何だか違う気が……


 わたし自身のコトなんて興味なく。


 やっぱりCards soldierに近づくためのオトモダチごっこかなぁ?


 何だかすごく悲しいのをこらえて、わたしはふるふると首を振った。


 オトモダチって、同じ趣味のヒトの中から見つかるものだよね?


 井上さんがわたしの『本当の』オトモダチになってくれないのなら、部活に入って、新しい誰かを見つけていこう……って思った。


「宗樹からは、軽音部に来るな、って言われたし……やめとく。
 ……でも、軽音部以外でいくつか見ておきたい部活はあるから午後は残ろうかな?」
< 85 / 272 >

この作品をシェア

pagetop