うそつき執事の優しいキス
 そこでは美味しい食事の販売はもちろん、お弁当を食べるのも自由だったから大抵のヒトが、ソコでご飯を食べていたんだけども……


「君去津高にカフェテリア?
 ……無いって、そんなモノ。
 それにもちろん、クレジットカードなんて使えるワケ無いでしょ。
 普通の学校、なんだから」


「……え?」


 井上さんの言葉に、今度はわたしが耳を疑った。


「じゃあ、お昼ってドコで食べるの?
 お弁当持って来てないヒトって、お昼、どうするの!?」


 ビックリして聞いたわたしの手を、井上さんは引っ張って……なんだかとても騒がしい所に連れて来てくれた。


 うぁぁ……今度も、人ごみですかっ!?


 ヒトの塊は、一年生から三年生までの君去津高の生徒たち!


 それが、廊下の奥にできた臨時スペースみたいなテーブルに群がっているんですけど……!? 


 な、なんだか、電車の朝ラッシュよりも殺気立ってる気がする……!


 とても、ゆっくり食事出来る場所なんかじゃなく!


 わたしは、恐る恐る井上さんに聞いた。


「ここ、ドコ!?」


「購買部!! お昼持ってきてないヒトは、ココでパンを買うの!」


 あたしもお昼持ってきてないし、じゃあ行こっか、と。井上さんは、にこっと笑うと、人ごみの中へ消えて行った。
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