うそつき執事の優しいキス
うそつき執事のなやましい事情
「終わった~~!」


 気分は、もうしっかり意地よね。


 君去津高校に入学した大事な最初の一日目。


 井上さんと同じくらい、良いヒトいないかな、って。


 軽音部以外の、今日活動している部活を回れるだけ回って見学していたら、時間はもう、夕方遅くなっていた。


 一番星が、きらりと光るのを眺めながら、一人。


 朝来た道を戻って海に出たとたん、わたし思わず叫んでた。


 ん~~大声出すって気持ちいい~~


 今日は、朝起きてから今まで、いろんなことがあり過ぎるぐらいだったけど。


 初めての場所に来て、慣れないことを沢山やった不安も、ストレスもぜ~~んぶ、声に乗せて、どっか行きそう。


 そう言えば、朝会った蔵人さんも歌えない、とか言いつつ、大声を出していたもんなぁ。


 ……と、そこまで考えて、はた、と気づいた。


 わたし、何か一つ忘れているような気がした。


 金髪碧眼の蔵人さんの顔を思い浮かべて、さらに思いだしかけたんだけど……


 朝、わたしが蔵人さんに出会う、少し前。なんか大変なコトがあったような気がしたんだけど。


 なんだっけ?
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