うそつき執事の優しいキス
 首をかしげながら桜並木を下り、うーんと唸りながら視線を上にあげると。


 今まで忘れていた恐ろしい現実が、目の前にあった。


「……終わった」


 わたし、思わず口の中で呟いて、二、三歩後さずる。


 だって、そこにはいかにも幽霊の出そうな君去津駅がどーーんと立ちふさがっていたんだもんっ!


 そう!


 忘れてたって『コレ』!


 君去津駅がめちゃくちゃ怖いってことだったんだ。


 ちょっと、そこのアナタ!


 たかが駅ぐらいでナニ怖がってるの? なんて言わないでよねっ!


 朝、散々宗樹に脅かされた揚句。


 古~~い、木造作りの駅舎は、沈みかけた太陽に照らされて、ほの暗く闇が濃い分もっと怖い。


 外灯になっている蛍光灯も、電気がついているのに調子悪く、青白い光がちかちかと明滅を繰り返し……


 今は帰宅時間のはずなのに、まばらにしか駅から出て来ないヒトたちをゾンビみたいに見せていた。



 無~~理~~!



 わたし、このお化け屋敷みたいな駅、一人で入るの無理!


 怖すぎる~~
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