うそつき執事の優しいキス
「まず、俺とあんたはこれから先『絶対に』オトモダチにはならない……なれない。
 そして『ただの知り合い』でも終われないから」

 う……と。


 口調は軽いけれど……宗樹の顔、心なしか怖い?


 その怖い顔のまま、彼は言葉をつづけた。


「……それに、そもそも『俺の全部』は西園寺のモノだからさ」


「……え?」


 それって、どういうコト?


 首をかしげるわたしに、宗樹は堅い表情のまま、口元だけで笑う。


「ウチのクソジジィとオヤジの就職先って一体ドコだよ?
 俺達家族が飯食って、服着て、住む家があんのも。
 そして、このガッコに通えるのも、結局、全~~部西園寺が出してくれるからだ。
 生きる手段を全て西園寺に頼っている以上、ジジィもオヤジも俺自身もまた、西園寺のモノ、だろ?」


 え?


 宗樹はとても真面目に……真剣な顔をしているけれど、言ってる意味が良く……判らない。


 宗樹が……彼の家族が、ウチの……西園寺のモノ?


 まさか!


「ちょっと、待ってよ!
 それって変よ?
 爺……宗樹のお爺さんも、お父さんも、本当に真面目に良く働いてくれてるよ?
 その頑張った報酬を、就職先の西園寺家が、フツーにお給料にしているだけじゃない。
 今の時代、何も西園寺にこだわらなくても、就職口なんて山ほどあるのに、わざわざウチを選んでくれているんでしょう?」
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