よくばりな恋


「そうよ、翠ちゃん。翠ちゃんはちょっと我が儘言うことも覚えなさい。人に気を使ってばっかりじゃダメよ」

長瀬さんが少し強い口調で言う。

「はい・・・・・」

心配してくれているのだ。妹が先に嫁いでしまって、縁遠いわたしのことを。

「病棟行ってきます」

ごめんなさい、ありがとうございます。


外来患者さんで込み合う受付ロビーをぬけて、病棟へ向かう。廊下を曲がったところで斯波先生と出会った。

「おはようございます」

笑顔で挨拶する。

「おはよう」

先生も笑顔。デコピンをして手をヒラヒラさせて歩いていく。白衣の裾が翻る。

昨日、あれから泣き止むまでわたしをあやし続け、夜になると車で家まで送ってくれた。

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