よくばりな恋
「廣田さん、ちょっと見せて」
と笑いを堪えながら顎に手をかけようとしたところで反対から出てきた手が顎をあげる。
「このくらい大丈夫でしょう。鼻血もすぐ止まりますよ。衆人環視の中で何してんですか、恥ずかしい」
聞き慣れた低い声がする。
「海斗、翠ちゃんは嫁入り前なんやぞ。なんかあったらどうするんや!」
わたしはいたたまれなくなって
「院長先生、大丈夫!もう鼻血止まりました!ホラ!」
外科部長が吹き出す。
「廣田さん、鼻の周り血だらけだよ。早よ洗った方がええ。