よくばりな恋
「ごめんやで。海斗の様子をちょっと見に行ってきた」

「あら、いかがでした?」
ちはやさんがコーヒーをサーブしながら聞く。

「うーん、まあいい意味でも悪い意味でも俺様やねえ。看護師さんも手際が悪いと叱りとばすしね」




・・・・・・・・・・意外。



斯波家の男性はみんな人当たりがよくて穏やかなイメージがあるから。

「翠ちゃん、海斗に意地悪されたら言いなさいよ。仕返ししたげるからね」

「大丈夫ですよ。自分で仕返しします」

「ははは、自分でするか。それより茜ちゃんは元気だった?」

「はい。来年6月にはわたしおばさんです」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?





反応なし・・・・・・・・・・・・・・・?


・・・・・・・・・・・・・・・ぐしゅ。



え・・・・・・・・・・・・・・・?


「良かったねえ、翠ちゃん。廣田が生きてたら喜んだだろうなあ」

「はい」

「里帰り出産はウチでしたらええ。ウチのやつも喜ぶし、2ヶ月でも3ヶ月でもおったらええよ」

「ああ、いえ。貴仁くんのご両親がこちらの事情をよくわかってくれてて、あちらで面倒をみてくださるそうなんです」

あからさまにがっかりした顔をされてしまった。

「わかった。でも絶対僕にも茜ちゃんの赤ちゃん抱かせてや。僕にとっても初孫みたいなもんやからね」

「ありがとうございます」


仕事ではおそろしく有能なのに、優しく
涙もろい院長先生がわたしは大好きだ。
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