よくばりな恋


なんとなく胸騒ぎがした。ベッドルームのクローゼットを開ける。翠の着替えが入っていたはずだ。

けれど、そこにはオレのものしかない。

洗面に行くと、翠の歯ブラシもない。

翠の痕跡がどこにもない。

ドアポストに翠に渡したはずのスペアキー。

翠の携帯に電話をかける。

返ってくるのは「お留守番サービスに接続します・・・・・」という冷たい声。



この日から翠の携帯は電話も通じず、メールも返事が返ってくることはなかった。

翠と話さなければと思いながら、日々の忙しさに紛れてなかなか時間がとれない。
もともと、揶揄って遊ぶつもりで、そんな深入りする気もなかった。

打算がなくて、裏表もない。ホントは寂しいくせに強がって、自分のことは後回し。

バカだ。
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