よくばりな恋


普段通りの先生と緊張しながらリビングに足を踏み入れる。

「オヤジ」

院長先生はソファーに座り、新聞から目を離さない。

「オヤジ!」

もう一度先生が呼んでも無反応だ。


やっぱり許してもらえないんだ・・・・・と気持ちがどんどん沈んでいく。先生がわたしの背中をポンポンと叩いた。

「聞こえないフリでもええけど、一応報告しとく。オレ翠と付き合ってるから。いずれは結婚するつもりやし」

それでも院長先生は新聞から顔を出さない。

「おじさま、ごめんなさい。わたしでは役不足かもしれないけど・・・・・あの・・・・・」

涙腺が緩んで言葉に詰まる。

「翠ちゃん、海斗もとりあえず座りなさいよ」
おばさまがティーセットを載せたお盆を
ローテーブルに置いた。
< 189 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop