よくばりな恋
普段通りの先生と緊張しながらリビングに足を踏み入れる。
「オヤジ」
院長先生はソファーに座り、新聞から目を離さない。
「オヤジ!」
もう一度先生が呼んでも無反応だ。
やっぱり許してもらえないんだ・・・・・と気持ちがどんどん沈んでいく。先生がわたしの背中をポンポンと叩いた。
「聞こえないフリでもええけど、一応報告しとく。オレ翠と付き合ってるから。いずれは結婚するつもりやし」
それでも院長先生は新聞から顔を出さない。
「おじさま、ごめんなさい。わたしでは役不足かもしれないけど・・・・・あの・・・・・」
涙腺が緩んで言葉に詰まる。
「翠ちゃん、海斗もとりあえず座りなさいよ」
おばさまがティーセットを載せたお盆を
ローテーブルに置いた。