よくばりな恋
噂の彼
連休あけ、また普段通りの日常が始まる。


わたしは病院で管理栄養士として勤めている。朝出勤して女子更衣室で私物をしまい、白衣を羽織るだけの簡単な着替えをしていると、やけに周りの看護師さんたちのメイクが念入りのような気がする。

「ねえ、なんか今日みんな気合い入ってる?」
隣のロッカーで着替えをする薬剤師の小林さんに聞いてみる。

「あら廣田さん聞いてへんの?」

「なにを?」

「今日から院長先生の息子さんが外科のドクターとして来るんやて。」

ああ なんか連休前に聞いたような・・・・・・

「すごいイケメンのキレ者らしいわよ。わたしも20歳若かったらみんなと一緒に騒ぐんやけどなー。残念」

「残念って小林さん」
思わず吹き出す。

「あら~だってあわよくば玉の輿やん。
医者でイケメンで金持ちなんて極上やないの。ほら、廣田さんもお化粧頑張んなさい!」

「わたしみたいな地味子のアラサーには恐れ多いですよ。身の丈にあった人を探します」

「もー。欲のない子やねえ。そんなこと言わんとがっつりいきなさいよ。幸せ掴めへんわよ」

「はあい。」

と笑いながら返しておく。

悲しいかな、28年生きてきて自分から積極的に恋愛に向き合ったことがない。容姿に特別自信があるわけではないし、気のきいた会話ができるわけでもない。この歳で情けない気もするけれど、恋愛偏差値も低め、経験値も圧倒的に足りないわたしは無理せずゆっくり進むしかない。





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