よくばりな恋
心地良さにひたっていたわたしを急に現実に引き戻す電子音。
「悪い。病院からや」
パンツのポケットから携帯を取り出す。
撫でてくれていた手が離れていって、さみしい気持ちになるのは何故・・・・・・・・・・?
「わかった。すぐ行く」
電話を終えた先生はわたしを離し、立ち上がる。
「悪い、翠。病院に行かなあかん。急患で手が足りないらしい」
「わかりました。先生、スペアキー置いといてくれたら片付けして戸締りしてドアポストに入れときますよ?」
ジャケットをはおりながら先生がわたしを見る。
「そうして。またお礼は改めてする」
先生がわたしの手にキーを落とす。
「返さんでええよ。今度メシ作りにきて」