よくばりな恋
「オレの知らないところで倒れるほうが迷惑だ!」
ふいっと先生が寝室を出ていく。
なんで怒るの?なんで帰らせてくれないの?顔を覆う両手の指の隙間から涙が後から後から流れる。
カシャンとベッドサイドに物が置かれる音がして、両手首を握られ、顔を覆う手を外される。
「病人相手に怒鳴って悪かった」
タオルで涙を拭われる。
「おまえが買ってたゼリーなら食えるだろ?なんか腹に入れてから薬飲め」
先生がベッドに腰かけ、わたしの髪の毛をくしゃりとする。目線があうと、眼差しが思いがけず優しくて、切ない気持ちが押さえられなくて、今なら熱のせいにできるなんてズルいことを考えて、先生の薄いグレーの細いストライプのシャツの胸にしがみついた。