よくばりな恋


30秒でピピッという電子音がすると、横から手が伸びてきて体温計を奪われた。

「37.8度。まだあるな」

「でも昨日よりだいぶラクになりましたよ」

「喉みせて」

素直に口をあける。

「ま そんなすぐには腫れはひかないか。また熱があがるかもしらんから薬飲んで寝てろ」

「はい。お世話になりました。そしたら・・・・・」
ソファーから立ち上がろうとして、腰に回された腕で強引に引き戻された。

「どこ行くんだよ?」

先生の膝にのせられ、耳元で言われる。くすぐったくて、恥ずかしくて、心臓がもう尋常じゃない早さで動いている。

「どっ・・・・・どこってウチに帰らないと・・・・・・・・・・」

「治るまでウチにいろ。医者つきや」
< 91 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop