キミが教えてくれたこと


『…ただいまー』


とても長い1日だった。朝からいろんなことがあって茉莉花の頭はパンク寸前だ


玄関で靴を脱いでいるとカチャカチャとフローリングを歩く音が聞こえる


振り向くと愛犬パスタが待ってましたと言わんばかりにくるくる回り、尻尾を大きく振って喜んでいた


『パスタ、ただいま』

茉莉花はパスタをゆっくりと抱き上げ腕の中に収めると、小さな廊下を歩きリビングに向かう


「へぇー、ちゃんと一人で留守番してんだなー」


茉莉花の背後から抱きしめているパスタを見て言った


『まだうちに来て一年くらいだけど、全然手のかからない賢い子なの』


パスタのことを話す茉莉花の表情はとても穏やかで、ハルトは少し嬉しくなりパスタの話しを続けた


「一年ってことはまだ子犬?」


『ううん…里親として引き取ってるから今は推定5歳くらい』


里親…、その言葉を繰り返すと、茉莉花は眉を下げ話し始めた



『両親の友達でトリマーの方がいて、その人と保健所へボランティアに行った時に出会った子』

くりくりの大きな目で茉莉花を見つめ嬉しそうなパスタ



「…そっか。」

こんなに可愛い子が…とハルトは茉莉花の側に行き何もかもを透き通ってしまう手でパスタの頭を撫でた


まるでその手が実体であるかの様に優しく


その自分よりも大きな手に茉莉花は一瞬どきりとした


「お前も俺もラッキーだな」


ハルトはパスタに話しかける


『…え?』


「だって、一人で彷徨ってたところを茉莉花に助けてもらったんだから」



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