キミが教えてくれたこと


『助けた…なんて。そんな…別に私は…。それにあなたは勝手に私の家にいただけじゃない!』


茉莉花はパスタを連れて部屋に入る


「ラッキー犬とラッキー幽霊!茉莉花は何でもありだなー!」


白い歯を出して楽しそうにするハルトに呆れ顔の茉莉花は部屋に入るとパスタを降ろし、冷蔵庫を開け野菜を取り出す


「…なにしてんの?」


『夕食作るの!気が散るから向こう行ってて!』


手際よく包丁で野菜の皮を切り、夕食作りに取り掛かる茉莉花の後ろ姿を見てハルトは聞いた


「家族とは…離れて暮らしてるのか?」


茉莉花の家はマンションの二階。ただ、部屋の間取りは1DKでダイニングキッチンに寝室

家族で住むには不釣り合いな間取りと高校生の一人暮らしにずっと疑問に思っていた


『…家族は…いない』


「え?」


茉莉花の答えにハルトはしまった、と思った


『母は私を産んだ時に、父は去年心筋梗塞で亡くなった』


「…そっか…わりぃ」


茉莉花は野菜を切る手を止め、ハルトの方を見る


『そういう顔、似合わない』


茉莉花の話しに何と言っていいか分からず、眉間に皺を寄せているハルトに言った


『母の記憶は元々無いし、父も男手一つで私を育ててたから家にいることも少なかったし…家事はいつも私の担当だったから慣れてるし気にしないで』


そういうともう一度夕食の準備に取り掛かる


ハルトは何も言わず茉莉花の後ろ姿をただ見ているだけだった



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