キミが教えてくれたこと


『川瀬さん…』


「カワセサン?」


ハルトは何のことかわからず聞き返す


『川瀬さん!私が遅刻した後に入って来た人!』


「え?あ。ああ!あの美人さんね!」


思い出し、両手を叩くと茉莉花の表情がムッとなる

そんな茉莉花を見てハルトの顔も強張る


「で、その川瀬さんがどうしたよ?」


少し冷や汗をかきながら理由を聞くが、実は聞かれた本人もよく分かっていない

何故か無性に腹が立って、でもこの気持ちを何て言ったらいいのか悩んでいるのだ

ハルトは何も悪くない。ただ自分の中でこの感情の整理がつかなくて当たってしまう

でもハルトはそんな自分を責めずに優しく聞いてくれた

その気持ちに応えるには素直に思ってることを話すのが一番だと思った


『ハルトが…川瀬さんのこと美人って言った』

「ん?」

『それから川瀬さんのことずっと舐める様に見てた』

「おい!人聞きわりぃこと言うな、見てねぇよ!」

『それがなんか…何て言うか…無性に…』

「………」

『すごく…嫌な気持ちになったの』

「!」


だからハルトのせいじゃない。と言って見上げてくるハルトの視線から逃げる様に目を逸らした


その言葉を聞いてハルトも目線を逸らして組んでいた右手で頭をかく


「えーっと、それってー…つまりー…」

『………』

「ヤキモチ…ってことだよな?」

『…へ?』

「いや、だって他の子のこと美人だとか聞いて嫌な気持ちになったってことはー、つまり…」


そこまで聞いて茉莉花は顔から火が出そうなくらい真っ赤になった


『ち、ちちち、違う!!!絶対違う!!!』

「え、だってすんげぇ機嫌悪かったじゃん」

『違うってば!!…ちょっと!何笑ってんのよ!!』


勢いよく立ち上がるとハルトは手の甲で口元を抑えて笑うのを我慢している


「ぶはっ!ダメだ!茉莉花おもしれーっ」

とうとう声を出して笑い転げているハルトを怒りのままに踏み潰そうとする


『む!か!つ!く!』


顔を真っ赤にしながらハルトを踏みつけるが、実体のない彼には効くはずもなく芝生を踏む音しか響かなかった


「ははは、わりーわりー」

全く悪いと思っていないだあろう彼の言葉に両腕を組んでそっぽを向く

そんな彼女の目の前に立ち、ハルトは人差し指を茉莉花の口元に持っていく

「…そうゆう素直なとこ、可愛いじゃん」


また真っ赤になって怒る茉莉花を見てハルトは目尻を下げて笑っていた



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