キミが教えてくれたこと


「でも、昨日林さんと話して胸の中にあったわだかまりがすっと溶けた気がした」

『え?』

百合はアルバムを持つ茉莉花の両手を握った

「恥じる必要なんてない。好きなことに自信を持っていいって言ってくれた時、自分は自分のままでいいって認めてあげることができた。そしたら、周りの目なんて気にならなくなった!自分をもっと好きになれたの!」

茉莉花の持っているアルバムを見る


「この中の私も、今の私も、川瀬百合なんだって。だから…気付かせてくれてありがとう」

真っ直ぐ、笑顔で言う彼女が輝いてみえた

『自信を持つって、まずは自分を好きになるってことなんだね。うん、川瀬さん今すごく綺麗だよ』

百合は少し頬を赤く染めた


「それでね、お願いがあるの…」

改めて百合は座り直す


「私と、友達になってもらえますか!?」


ぽかーん、と目の前で真っ赤になって俯く百合に口が開いてしまった


『え、私?私でいいの?』


今まで友達と呼べる人なんていなかった

ましてや、友達になって欲しいと頼まれたことなんて以ての外。

自分でいいのだろうかと不安になった


「林さんがいい!林さんと友達になりたいの!」


だめ?と上目遣いで目を潤ませながら言われる。きっとこれは男を虜にする武器だろうが、彼女の計算ではない素直な仕草だとわかっていた


『…こちらこそ、よろしく』

その言葉に百合はわーい!と両手を上に広げた


「じゃあ茉莉花ちゃんって呼んでもいい!?」

『うん…』

少しこそばゆい感覚があったが、それと同時に嬉しさも感じた


「私のことは百合か、ゆりりん♪って呼んでね!」

『…じゃあ百合で』


さすがに最後の滑稽なあだ名は呼ぶのに恥ずかしかったので名前で呼ぶことにした


「茉莉花ちゃん、これからよろしくね!」

『よろしく、百合』


二人はニコニコと笑い、一緒にお昼ご飯を食べた


ハルトも二人の頭上から様子を見ていて、よかったと安心した

見上げると雲ひとつない青空で、ハルトは気持ち良さそうに両腕を力一杯あげ伸びをする
両手の指を指と指の間に絡ませ、後頭部に当て仰向けに倒れると片足を組んで宙を寝そべる


茉莉花と百合、二人の笑い声を聞きながら口角を上げ目を瞑った



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