キミが教えてくれたこと


授業が全て終わり、帰宅した後ハルトとパスタの散歩に出ていた

「しっかし、茉莉花の走りは幼稚園児並だなー!」


散歩中、ハルトは白い歯を出しながら意地悪にそう言う

いつもの様に顔を真っ赤にしながら怒るだろうと思っていたら「…うん」としか返事がなかった


「どうした?腹でも痛いか?」

ハルトは茉莉花の前に立った


『今まで、誰かと仲良くなるなんてことなかったし連絡事項以外クラスの子と話すことなんて無かった』

いつの間にかクラス内ではグループができ、茉莉花はいつも輪に入れず教室では一人だった


『でも、みんな今日みたいに話してくれたりフォローしてくれたり…。私のこと考えてくれてた』

「…それは茉莉花が変わったからだろ?」


え?と足元を見ていた目をハルトに向ける


「どんな人でも最初の一歩ってすげぇ怖いじゃん。自分のことどう思ってんのか、とかこんな風に思われたらどうしようとか」

ハルトはまるで階段を上っているかのように空中を歩く


「でもその相手が受け止めてくれそうだったら、その一歩ってわりと簡単に進めるんだよな」

『…どういうこと?』


ハルトはくるっと振り向き茉莉花の前に立って顔を近づけた


「最初会った時、何もかもつまんなさそうですましてたけど今はちゃんと感情が表に出るし新しい友達も出来た。茉莉花が知らないところでそんな茉莉花を見てる奴らがいるんだよ」


真正面でニコッと笑ってそう言うハルトに顔が赤くなる


ハルトはずっと見ていた

授業中の風景、みんなが話していること、目線…毎日たくさんの人の移り変わる感情が手に取るようにわかってくる


「ゆりりんと仲良くなったことで茉莉花の自然な姿を見てみんな茉莉花の見方が変わって…仲良くなりたい話してみたいって思ったんだよ」


よかったじゃん、と自分の事のようにニコニコしている


『そんなの…ハルトが、』


「ん?」


聞こえなかったのか言いかけたことを聞き返されたが、恥ずかしくてそれ以上言えなかった


ハルトがいてくれたから。
ハルトが自分を理解しようとしてくれたから。
だから安心して素直な自分で居られるようになった。
思ったことを言えるようになって、友達が出来た。

ハルトがいつも支えてくれているから。

そう言いたいのに言葉が出ない。


『…ゆ』

「ゆ???」



『ゆりりんって勝手に呼ばないでよね!!!』

「はー!?なんだいきなり…?」

もっと素直になれたら…と思いながらもパスタと一緒に急いでその場から離れた


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