キミが教えてくれたこと


「こういうのはどう?」

「えー、地味じゃない?もっと可愛くて目立つ、かつ動きやすい服!」

「じゃあこれはー?」


茉莉花の席の周りには今までこんなに人が集まったことがないというほど女子が群がっていた

今は衣装決めにみんな夢中で、ハルトでさえ入りこめず輪の外にいる


「なぁなぁ、俺らは?」

「俺らの意見とか必要ないの?」

「男子は大丈夫!向こう行って!」

「間に合ってまーす」

団体女子の強さを初めて知った


「林さんはどんなのがいいと思う?」

『…え?』

突然尋ねられて驚いた

開いている雑誌に目を通し、少し考えた後これ…と指を指した

『みんな色違いのパニエってのはどうかな?目立つし、パニエ以外は私物で好きなようにアレンジ出来るし…』


意見を聞かれたことがなかったので恐る恐る提案し、ちらりと女子を見るとみんな目を輝かせていた


「いい!可愛い!」

「靴下もパニエと同じ色にして、白いTシャツってのは?」

「スカートだったら見えちゃうからパニエ風ショートパンツにしようよ!」


一つの意見を伝えるとアイディアがどんどん生まれて来てみんなウキウキしていた

「さっそく採寸しよう!」


衣装作成メンバーがメジャーを取り出し、何人かを更衣室に連れて行った


「林さんも!来て来て!」

手を引かれて戸惑っていると百合がそっと背中を押してくれた


「行こう、茉莉花ちゃん」


女子だけ楽しんでずりぃー!と言う男子の声を後手にしながら頷いて更衣室に向かう


更衣室には女子が整列して並んでいた

茉莉花も順番に並んで何分か待つと自分の番になった


「はい、林さんこっち向いてね」

クラスメイトがメジャーを腰に当てて採寸する


「林さんは周りと関わるのが嫌なんだと思ってた」

『え?』


測った後、紙に記入するクラスメイトを見た

「いつも一人だったから…。一人が好きなのかなって思ってたけど、こうしてみんなと一緒に行事に参加してくれて嬉しかった。高校最後の体育祭、一緒に楽しもうね」


そう言って笑顔で言う彼女に自分が間違っていたと思った


勝手に距離を置いて、勝手に怖がっていたのは自分だったのだ


こんなにもみんなは優しかったのに。


『うん、ありがとう』


心の中で更衣室の外にいるハルトにもお礼を言った






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