キミが教えてくれたこと

『ごめんなさい!遅れました!』

「お疲れ様、開店10分前だから大丈夫だよ。着替えておいで」


放課後、クラスメイト達と体育祭のことで居残りをしているといつの間にかアルバイトに向かう時間を少し過ぎていた

急いで向かうと出勤ギリギリの時間でなんとかオープンの時間には間に合った


「…茉莉花ちゃん、なんか糸くず付いてるけど」

『え?あ、うわ!ほんとだ!』

「こっちいらっしゃい。取ってあげる」

店長の奥さんは優しく茉莉花の髪についた糸くずを取ってあげる


「はい、これで大丈夫。でもなんで糸くずが…」

『えっと…今体育祭の仮装用にクラスの女子と服を縫ってて…。それで遅れてしまって…』


すみません。と謝る茉莉花に驚いた後ふっと笑みを浮かべた


「茉莉花ちゃんの口からお友達の名前が出るなんて」

「茉莉花ちゃん最近楽しそうだもんなー!よかったよかった!」

二人とも嬉しそうに笑った


茉莉花は顔を赤くして下を向くしかなかった


「さぁ、今日も元気にオープンしますよ!」


奥さんが手を叩き、その合図ではい、と返事をした後入り口のドアに掛かっている看板をcloseからopenに変える


店長の作るディナー料理の匂いが外にも香る

いい香り、と空気を吸い込みよし!と気合いを入れてgrazieの扉を開けた



上がり時間になり、パスタを迎えに行って散歩をしながら帰る


「いよいよ体育祭も来週だなー」


朝登校し週に何回かみんなと衣装作り、放課後はgrazieのアルバイト

そんな慌ただしい毎日を過ごしているといつの間にか体育祭の日も残すところ一週間後となった


『ほんとだね、いつの間にか…』


そう言って茉莉花は立ち止まった


『…私、変わった?』


「え?」


立ち止まった事によって茉莉花より前に立っていたハルトは茉莉花の前まで戻る


『最近、いろんな人に言われる。自分ではそんな風に感じてないけど、そうなのかな…』

パスタは足元で尻尾を振って茉莉花を見ている

『…もっと変わりたい。みんなが私にしてくれたように、私もみんなに何か返したい』


ハルトはふ、っと笑う


「…茉莉花はどうしたい?」


ハルトの言葉に真っ直ぐ前を向く


『リレーで一番になる!!』


茉莉花は公園のグラウンドを前に拳を強く握った





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