キミが教えてくれたこと


次の日から夜は公園のグラウンドでリレーの練習をするようになった

パスタもすぐ側にある電灯に繋がれて茉莉花を見守っている


『まず走ってみるからどこがおかしいか教えて!』


ハルトにそう言うと片足を前に出し、走る準備をする

「行くぞー!よーい…スタート!」


ハルトの掛け声と共に茉莉花はスタートした


が、腕は大きく振っているものの足の回転が極端に遅くタイムがなかなか縮まらない


「はいはいはいはい、ストップ!」


茉莉花は振り返って、なんで?という顔をした


「今の走りをビデオで撮って見せたいくらいだわ!まず走り方がおかしい!」


普段浮いてばかりいる幽霊になぜかダメ出しをされて眉間にシワが寄る


『…おかしいって…。ちょっと失礼じゃない?』

「腕の振りの割に足の回転が遅いから、ただの競歩になってる。まずは脚をしっかり使おう」


茉莉花の言葉を無視してハルトの指導が始まった


「はい、ではまずここで足踏みをしてみましょう」


『足踏み?走らないの?』


いいから、と言うハルトに疑問を持ちつつも言われたままに足踏みをする


「じゃあそこで俺の手のたたく音に合わせて脚を上げてみましょう」


そう言ってパン、パンと一秒間に一回ペースで手拍子する

何度か続けていくと少しずつ手拍子が早くなり、最後には拍手の音と同じような速さで脚を上げることになったがなかなか音とリズムが合わない


茉莉花の息が段々と上がり、もう駄目!とギブアップしてしまった


「んー、そうだな。茉莉花は足の裏全体を地面につけて走ってるから動きが遅いんだな」


一人ブツブツと分析しているが、そんなハルトを気にする余裕もなく茉莉花はぜぇぜぇと膝に手をついて息を整えていた


「よし、茉莉花。次、つま先で地面を蹴るイメージでもう一回」

まだ息も整っていない間に次のステップを言い渡され、スパルタだ…と思いつつも自分のわがままに付き合ってもらっているので何も言わず次はつま先で足踏みをする


あれ?と先程と違う感覚に陥る


先程まで手を叩く音になかなか合わせられなかったが、今はなんとか合わせられるようになった


『すごい!!さっきより出来てる!』


茉莉花は余程嬉しいのか、ピョンピョンと飛び跳ねている


「後は足音を立てないように意識してやってみるといいかもな。とりあえず今日はつま先で足踏みを50回3セット!」


お、鬼だ…と半泣きになりながらもハルトコーチの指導を素直に聞く茉莉花だった


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