キミが教えてくれたこと


茉莉花たちのクラスは学年で6組中3位だった

昼から得点争いになる競技が多いのでみんな気合いを保ちつつお昼休憩となった

教室に向かおうと準備をしていると「茉莉花ちゃん」と声を掛けられた

振り返るとgrazieの店長さんと奥さんが立っていて驚いた


『え、どうして…』

「驚かせてごめんよ、茉莉花ちゃん今日が体育祭だって言ってたからよ」

「これ、よかったらお昼に食べて」

奥さんから手渡された紙袋の中身を見るとカツや野菜、チーズなどボリュームのあるサンドイッチが入っていた


「grazie特製サンドイッチだ!」

「お友達と食べてね」

ランチ営業の時間を割いてわざわざ来てくれた二人に涙が出そうになった

「今の茉莉花ちゃんを見たら、きっとお父さん達も喜ぶと思うよ」


店長の優しい手が茉莉花の頭を撫でる


昔から父と母を知っているからこそ、どんなことで喜んだり悲しんだりするか分かるのだろう
そしてそんな二人は茉莉花の事をきっと自分の娘の様に想っている

『…ありがとうございます』

父に頭を撫でてもらっていた小さい頃を思い出し少し顔が赤くなった

「茉莉花ちゃん!」

手を振って近付いて来た百合は茉莉花の近くに人がいると気付かず、右手を口元に当てていた

「じゃあ、仕事に戻るわね」

「体育祭楽しんでな!」


店長達は笑顔で手を振り校門に向かった

茉莉花も笑顔で手を振り二人を見送った


「ごめんね、お邪魔しちゃった…」

『ううん、大丈夫。…百合サンドイッチ好き?』


先程手渡された紙袋を広げて中身を見せると百合は目を輝かせた

「美味しそう!!!」

『一人じゃ食べきれないし、一緒に食べよう。他の子にも声掛けてみよっか』

茉莉花と百合は教室に向かい、何人かに声をかけてサンドイッチを食べた

茉莉花の周りにはたくさんの人が集まる

こんなにたくさんの人と笑い合ったのは本当に初めてで、心から楽しいと思えた



< 41 / 87 >

この作品をシェア

pagetop