キミが教えてくれたこと
『はぁはぁはぁ…っ、な、なんなのよもうっ…』
全速力のおかげか予鈴より10分早く着いた。息も絶え絶えに膝に手を置き、ハルトを睨みつけたがハルトも中庭のベンチで仰向けになって意気消沈している
『あなた、あの家から出られないんじゃなかったの?』
息も整ってきた茉莉花は着ていたブレザーを脱いでハルトの寝ているベンチに腰掛ける
「わかんねぇ…。確かにあの家から出ようとしたら体に電流が走ったんだよ。どこの出口から試してもそうだったし」
トイレの小窓から出ようとしてもだぜ!?ベンチからがばりと起きて訴えるハルトに、「馬鹿じゃないの」なんて思いながらチラリと目線を移した後ため息を吐く
「もしかしたら…」
ハルトはベンチを跨ぎ茉莉花の方に体を向ける
「出られないんじゃなくて、茉莉花から離れられない…とか?」
『………。』
そんなこと…とは思ったがもう既に朝からあり得ない状態ばかりの今、安易に答えを導き出せなかった
『ちょっと、この場から離れてよ』
「え?」
『いいから!試してみないとわかんないじゃない!あなた死んでるんだし、ちょっと電流が流れるだけでしょ!』
「ちょっと!?見ただろ俺の可哀想な姿を!!」
『いいから早く!男のくせに小さいわね!』
「なんだとこのやろう!この…っ人でなし!絶対恨んでやる!!」
もうお前なんか知らねー!バーカバーカ!と半泣きになりながらその場から離れようと宙を漂おうとしたその時…
「ぬおおおおおおおぉおぉおぅっ!!!」
音こそはしないが、ハルトはまるで電流が走ったかのように体が硬直しへなへなとその場に落ちた
『…そうみたいね』
「だから言ったじゃねぇかよーぅ…」
ごめん、と思いながらもハルトの反応が面白くて少し心の中で笑ってしまった