キミが教えてくれたこと
『とにかく、授業が始まるし教室に向かおう』
これからどうするかは、また昼休みに話そうと茉莉花は鞄とブレザーを持って教室に向かう
「真面目なやつー…」
茉莉花の後ろ姿を見たハルトはそう呟くと置いて行かれないように後ろについて行った
3年A組。茉莉花が入って行った教室のドアに備え付けられた表示札にはそう書かれていた
朝、あちらこちらで生徒たちがいろんな話をしているのが聞こえる
昨日のテレビ番組、芸能ニュース、漫画の話、好きな人の話、アイドルの話…
学生たちは友達と談笑しながら本鈴が鳴るまでの間を過ごしていた
そんな彼らをすり抜け、茉莉花は一番後ろの窓際の席に座り鞄から教科書を出すと頬杖をついて窓の外を眺めていた
まるで茉莉花の周りだけが時間がゆったり流れているかのように、そこだけが不自然と孤立していた
ーーキーンコーンカーンコーン…
本鈴が鳴り、生徒たちが自分の席に帰っていく
ガラガラっと30代後半くらいの優しそうな男性が入ってきた
「はーい、HR始めるぞー」
そう言った担任に気付き、茉莉花は担任の方を見る
『!!ちょっ…!!』
茉莉花は焦ったように勢いよく椅子から立つ
ガタガタっと鈍い音を立てて立ち上がる茉莉花の方を担任や生徒が見る
「?林、どうした?」
『あ…いや…、』
茉莉花の視線の先には、担任の横で何故か決めポーズをとっているハルトがいる
「茉莉花!どうだ?俺の方がイケメンだろ?」
ーー何をやっとんねん!!!!
青ざめて引っ張り出してやろうと思ったが、生徒や担任の反応を見て「ああ、本当に私以外見えてないんだ」と冷静に判断した
『…す、すみません。何でもないです』
「お、おお、そうか。なんかあったら遠慮なく言えよ?」
それじゃあ気を取り直して号令ー!と言う担任の合図に本日の日直が号令をかけた